多くの企業では、正社員に対しては毎月決まって支給される月例給与のほかに賞与や退職金を支給することを取り決めている。賞与は、月例給与と違って業績の変動に応じて金額を調整できるため、人件費の柔軟性を確保するものとなっており、「業績如何によっては賞与を支給しないことがある」との規定を設けている企業もある。退職金には後払い的な性格があるといわれ、勤続年数が長くなればなるほど退職金が増加するように設計されているのは、社員の定着率を図るという狙いもあるからである。会社都合で退職する者より、自己都合で退職する者の退職金を低く抑えるのも定着率向上のためといえる。しかし退職金制度の存在が、経済構造の変革を進める際に必要となる労働移動を抑制することから、日本経済にとってむしろマイナスに評価される方向にある。退職金制度は、年功序列型賃金体系による正社員の企業への定着を補強するものとして理解できる。賞与と退職金はいずれも正社員に対するシステムであり、特定の雇用目的のために雇い入れられて短時間労働を行うアルバイト・パートタイム労働者には本質的になじまない制度ということができる。使用者が労働者に退職金を支払うべきかどうかについては、特に法の定めはない。しかし、アルバイト・パートタイム労働法に関する指針では、事業主はアルバイト・パートの退職金については、就業規則のなかに「その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする」としている。使用者が、労働契約や就業規則、または労働協約のなかで退職金を支給する旨を定めた場合には、これにより退職金の支払い義務が生じる。退職金に関してこのような定めがない場合、使用者は退職金を支払う義務はない。なお、退職金についての規定がなくても、退職金支給の慣行がある場合には、使用者に退職金支払いの義務があるとした判例(宍戸商会事件東京地裁昭和四十八年二月二十七日判決)がある。
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